リーマンショックは、2008年にアメリカの金融機関リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに始まった世界的な金融危機です。
この危機は、なぜかアメリカだけにとどまらず世界中の経済に大きな影響を与え、日本経済も例外ではなく大きな影響がありました。
本記事では、リーマンショックがなぜ?どのように?日本経済に影響を与えたのか、わかりやすく徹底解説します。
リーマンショックがなぜ日本経済に影響した?リーマンショックが破綻した背景
リーマンショックが発生した背景には、アメリカの住宅バブル崩壊と金融機関の過剰なリスクテイクが関与しています。アメリカ当局の金融政策も、状況の悪化に一役買っていました。
以下に、リーマンショックが破綻した背景と、アメリカ当局の金融施策について詳しく説明します。
サブプライムローンの発行
2000年代初頭、低信用力の借り手を対象としたサブプライムローンが米国で増加しました。
当時、低金利政策と好景気により、住宅価格が上昇していたため、多くの人々が住宅購入に乗り出しました。
金融派生商品の利用
金融機関は、サブプライムローンをまとめて証券化し、投資家に売却することで利益を上げました。
これらの証券化商品は、リーマン・ブラザーズを含む多くの金融機関が取引していました。
サブプライムローンの証券化とは
- まず、金融機関(オリジネーター)が多数のサブプライムローンを一つにまとめます。
- 金融機関は、まとめたローンから生じる利息や元本返済を元に、新たな証券(資産担保証券)を発行します。この証券は、元となるローンの利息や元本返済が証券の収益となります。
- 証券は投資家に販売され、金融機関は証券の売却によって資金を調達します。投資家は証券を保有することで、元となるローンの利息や元本返済から収益を得ます。
この証券化により、金融機関はローンのリスクを投資家に分散させ、資金調達が可能になります。
住宅担保証券(MBS Mortgage-Backed Securities)
多数の住宅ローンをまとめて証券化したもので、投資家に売却されます。投資家は、これらの証券を購入することで、住宅ローンの利息や元本の返済から利益を得ることができます。担保付債務証券(CDO Collateralized Debt Obligations)
さまざまな債務(住宅ローン、クレジットカード債務、企業債など)をまとめて証券化した金融商品です。これらの債務がまとめられ、異なるリスクレベルに分けられ、投資家に売却されます。
住宅バブルの崩壊
バブル崩壊の理由には3つあります。
住宅価格の下落:
2000年代初頭にアメリカの住宅バブルが崩壊し、住宅価格が大幅に下落しました。これにより、ローンを組んで購入した住宅の価値が、ローンの残額を下回る「水没」状態に陥りました。住宅価格の下落により、借り手が住宅を売却してもローンを完済できなくなり、返済困難に陥るケースが増えました。
サブプライムローンの高いリスク:
サブプライムローンは、信用力が低い借り手に対して提供される住宅ローンです。金利が高く、変動金利型が多いため、金利が上昇すると返済額が増加し、返済が困難になることがあります。加えて、当初は低金利期間が設定されていたローンが多く、その期間が終了すると金利が急上昇し、返済額が大幅に増加するケースがありました。
サブプライムローンの一般的な特徴
- ティーザーレート(誘引金利): サブプライムローンには、最初の数年間(通常2年から3年)は低金利で始まる「ティーザーレート」が設定されることが多かったです。
この期間の金利は、年率3%から4%程度で始まることが大半でした。- 金利リセット: ティーザーレート期間が終了すると、市場金利に加えて、個々の借り手の信用リスクを反映したマージンが上乗せされるため、年率7%から9%、場合によってはそれ以上になることもありました。
経済状況の悪化と失業率の上昇
サブプライムローン危機が発生した2007年以降、アメリカ経済が減速し、失業率が上昇しました。これにより、多くの借り手が収入を失い、ローンの返済が困難になりました。
証券価値の暴落
サブプライムローンのデフォルト(債務不履行)が増加する中、これらのローンを含むMBS(住宅担保証券)やCDO(担保付債務証券)の価値が暴落しました。
これにより、これら証券を保有していた金融機関は大きな損失を被り、資本が減少しました。
リーマン・ブラザーズを含む多くの金融機関は、これらの証券の損失を抱えることになりました。
信用格付け機関の格下げと銀行間市場の流動性悪化
金融機関が抱えるMBSやCDOの価値が暴落すると、信用格付け機関はこれら証券の格付けを大幅に引き下げました。
また、金融機関自体の信用格付けも引き下げられることが多くなりました。
これにより、金融機関間での取引が困難になり、信用不安が広がりました。
信用不安が広がる中、銀行間市場では、金融機関が互いに資金を貸し借りする際の利率であるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が急上昇しました。
金融機関は、他の金融機関に対する信用不安から、資金の貸し出しを渋るようになり、市場の流動性が悪化しました。
リーマン・ブラザーズの経営破綻
信用不安と流動性悪化が進む中、政府や中央銀行は金融機関への救済措置を講じました。しかし、リーマン・ブラザーズはアメリカ政府による救済が行われず、2008年9月、リーマン・ブラザーズはサブプライムローン関連の損失と資金調達の困難により、経営破綻に陥りました。
これがリーマンショックと呼ばれる金融危機の引き金となりました。
リーマンショックがなぜ日本経済に影響した?リーマン・ブラザーズの経営破綻がもたらした影響
リーマン・ブラザーズの経営破綻は、世界中の金融機関に信用不安をもたらしました。
その流れを説明します。
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連鎖的な信用不安の拡大:
- リーマン・ブラザーズが経営破綻したことで、他の金融機関も同様のリスクに直面しているのではないかという疑念が市場に広がりました。この結果、金融機関間の信用不安が急速に拡大し、資金の取引が急減しました。
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銀行間市場の流動性悪化:
- 信用不安が拡大する中、銀行間市場の資金調達が困難になりました。金融機関は、相手先リスクを懸念して資金の貸し出しを渋り、市場の流動性が悪化しました。これが金利の上昇につながり、企業や個人の資金調達コストが高まりました。
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世界的な金融危機への波及:
- リーマン・ブラザーズは世界的な金融機関であり、その破綻は世界中の金融市場に波及しました。欧州やアジアなどの金融機関も、リーマン・ブラザーズとの取引やリーマンが発行した証券を保有していたため、損失を被ることとなりました。これが、世界的な金融危機へとつながりました。
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株式市場の大暴落:
- リーマン・ブラザーズの経営破綻により、金融機関や企業の資金繰りが悪化し、経済の先行きに対する不安が高まりました。これが投資家の売り圧力につながり、世界中の株式市場が大暴落しました。
リーマンショックがなぜ日本経済に影響した?その後の日本の対応は?
リーマンショック後、日本政府と日本銀行は金融市場の安定化と経済の回復を目指して、様々な政策措置を講じました。以下に、主な政策を具体的な数値を用いて説明します。
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日銀の緊急融資措置
- 日本銀行は2008年10月に、短期金融市場に資金を供給するため、無担保コール翌日物金利を0.3%に引き下げました。さらに、短期の銀行間取引市場に資金を注入し、流動性を確保するため、総額10兆円規模の緊急融資措置を実施しました。
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量的・質的金融緩和政策
- 日本銀行は2008年12月に、政策金利を0.1%に引き下げ、事実上のゼロ金利政策を導入しました。さらに、政府債券や民間債券の購入を拡大し、金融システムへの資金供給を増やすことで、市場の流動性を確保しようとしました。
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経済対策の実施
- 日本政府は2008年10月と12月に、総額27兆円規模の大型経済対策を発表しました。これには、雇用対策、中小企業支援、地域経済活性化など、さまざまな政策が盛り込まれていました。また、2009年4月には、総額15兆円の追加経済対策が発表されました。
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資本注入による金融機関支援
- 日本政府は、金融機関の資本基盤を強化するため、2009年に資本注入制度を導入しました。これにより、金融機関が必要に応じて政府から資本を受け入れることができるようになりました。最終的に、約2兆円の資本が金融機関に注入されました。
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円高対策
- リーマンショック後の金融不安が続く中、投資家は安全通貨とされる円に資金をシフトしました。その結果、円高が進行し、日本の輸出産業に悪影響を与えました。これに対応するため、日本銀行や日本政府は、為替介入や金利政策などを通じて円高を抑制しようとしました。
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アベノミクス
- 2012年に安倍晋三首相が登場し、アベノミクスと呼ばれる経済政策が導入されました。この政策は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の3つの矢で構成されており、リーマンショックからの経済回復を加速させることを目指していました。日本銀行は、さらなる量的・質的金融緩和政策を実施し、インフレ目標を2%に設定しました。
まとめ
リーマンショックは、なぜ日本経済に多方面から大きな影響を与えたのか理解は深まりましたでしょうか。
金融市場の混乱、輸出産業の打撃、内需の低迷などが相互に影響を与え合い、経済の悪循環を招いたのです。
リーマンショックを経験した日本経済は、その後も回復が遅れる状況が続いていますが、企業や政府は経済危機に立ち向かうための戦略や政策を継続的に検討しています。
今後の日本経済がどのように回復していくか、引き続き注目していきたいところです。
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